統合失調症の主な症状
統合失調症の症状は、大きく「陽性症状」「陰性症状」「認知機能障害」の3つに分けられます。これらの症状が組み合わさって現れるのが特徴です。
1. 陽性症状
健康なときにはなかった状態が現れる症状です。周囲から見ても分かりやすく、病気の急性期に目立ちます。
- 妄想:明らかに誤った内容であるのに、事実だと固く信じ込んでしまう状態。「誰かに悪口を言われている」「監視されている」といった被害妄想が多いです。
- 幻覚:実際にはないものを、あるかのように感じる知覚の異常です。中でも、自分を非難・命令する声が聞こえる「幻聴」が最も多く見られます。
- 思考の混乱:考えにまとまりがなくなり、会話のつじつまが合わなくなったり、話が飛んだりします。
2. 陰性症状
健康なときにあった機能が失われたり、低下したりする症状です。急性期を過ぎた消耗期・回復期に目立ちやすくなります。
- 感情の平板化:喜怒哀楽の表現が乏しくなり、表情が硬くなる、声のトーンが単調になるなど、感情の起伏が見られなくなります。
- 意欲の低下:何かをしようという気力がわかず、身の回りのことに関心がなくなったり、引きこもりがちになったりします。
- 思考の貧困:会話の数が減り、質問に対する返事も単調になります。
3. 認知機能障害
記憶力、注意力、集中力、計画を立てて実行する能力(遂行機能)などが低下する症状です。この障害により、仕事や学業、対人関係など、日常生活を送る上での困難さが生じやすくなります。
病気の経過
統合失調症は、多くの場合「前兆期」「急性期」「消耗期・回復期」という経過をたどります。
- 前兆期:不眠、不安、焦燥感、集中力の低下、知覚過敏といった、はっきりしない症状が現れます。
- 急性期:幻覚や妄想などの陽性症状がはっきりと現れ、周囲とのコミュニケーションが困難になります。
- 消耗期・回復期:陽性症状が少しずつ収まり、元気なく過ごす消耗期を経て、徐々に安定した回復期へと向かいます。この時期は陰性症状が目立ちやすいです。
再発しやすい病気でもあるため、症状が安定しても治療を継続することが非常に重要です。
統合失調症の治療
統合失調症の治療の柱は、「薬物療法」と「心理社会的治療」です。この2つを組み合わせ、長期的な視点で継続していくことが、症状の安定と社会復帰に繋がります。
1. 薬物療法
主に、脳内の神経伝達物質(特にドーパミン)の働きを調整する「抗精神病薬」が用いられます。この薬は、特に幻覚や妄想といった陽性症状に高い効果を発揮します。再発予防のために、症状が落ち着いた後も少量の薬を飲み続けることが不可欠です。
2. 心理社会的治療
薬物療法で症状を安定させた上で、社会生活機能を回復させるためのリハビリテーションを行います。
- 心理教育:ご本人やご家族が病気について正しく理解し、付き合い方を学ぶ。
- リハビリテーション:生活技能訓練(SST)で対人関係のスキルを学んだり、作業療法で集中力や持続力を高めたりします。
- 精神療法(カウンセリング):ご本人の悩みや不安に寄り添い、精神的なサポートを行います。
統合失調症は、早期に発見し、適切な治療を開始することで、その後の経過が大きく変わってきます。気になる症状があれば、一人で抱え込まず、ぜひ専門機関にご相談ください。